折角、わが現場担当ブディの話がでたので、彼の活躍にもふれないわけにはいかない。実はそもそも、万里の長城のような遠い現場にうちのスタッフを派遣する必要はないと、クライアントからは申し渡されていた。簡単なスケッチのような図面だけを送ってくれたなら、あとは中国サイドで完成まですべて面倒をみるから、余計な心配は不要だし、現場に何度も来る必要はないというのが、クライアントの意向であった。だから設計料はこれでやってくれというオファーであった。
[参考サイトのご紹介]
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海外のプロジェクトでは、この手の話は多い。日本のディベロッパーも海外の建築家には、だいたいこの方式で依頼する。簡単な図面だけで結構ですといういい方で、まず設計料を値切る。ディテールや材料について、建築家流のこだわりをいわれなくてすむので、工事費も安く抑えることができる。建築家が現場にたびたび来られると、細かいアラが指摘されたり、そのたびに気まぐれな変更や手直しが出たりして、工事費はさらにはねあがる。そんなもろもろの理由で、「簡単な図面だけで……」という惑烈無礼なやり方が、建築の世の中ではまかり通っているのである。案の定、クライアントからもそんな申し出だった。提示された設計料も、そのやり方にみあった安い金額であった。なにしろあんな荒地に、アヴァンギャルドな家をたててコミューンを作るという実験的プロジェクトだから、設計料の安さは仕方がないとも思った。しかし「簡単な図面」を渡しただけで、あとは相手に委せるというやり方は、なんとしても納得できなかった。建築というのは、最後は、ディテールの勝負になり、具体的な素材の勝負になる。その一番の肝を相手に委せてしまったなら、何のために苦労して設計しているのか、わからなくなる。とはいっても、相手から提示された設計料は、僕と担当との二人が飛行機で北京にいったなら、なくなってしまうほどのささやかな金額であり、担当者を現場に常駐させるなど、夢のまた夢という額であった。さてどうしようと悩んでいたら、プロジェクト担当のブディが折り入って話があるというのである。